「精神科の薬を飲んでいる俺は、俺じゃないのか」
「そうとも言えるな」
「怖いよ。自分じゃなくなるなんて」
「そういう時代なんだよ」
「科学か」
「科学だ」
「人間を社会の規格に収めるんだな」
「そういうことだ」
「狂っているのは社会なのに」
「まあ、そうも言える」
「病気か」
「精神病だな。生きてるだけ幸せだと思え」
「でも、俺は、俺じゃない」
「いや、お前は、お前だ」
「脳内物質をいじって人格変容した」
「それも自然だ」
「科学はどこまで突き抜ける。節度がまるでない」
「両刃の剣だな」
「俺も節度を持とう」
「そうしなさい」
「いよいよメジャーデビューか」
「気がはやいな」
「デメリットが気になる」
「別に何もないさ」
「そんなもんか」
「そんなもんだ」
「医療費は凄いだろうな」
「ああ、凄いな」
「マネージャーがいるな」
「くろいぬさんには無理だ」
「安心サポートは外せない」
「所長しかないな」
「4月はカアンファレンスだ」
「デビューは秋か」
「そんなところだろう」
「10万部の200円で2千万か」
「税金を忘れるな」
「制度は複雑だぞ」
「目標は10万部か」
「凄い数字だな」
「生活は変わらない」
「それで良い」
「
「調子は良いけどあわただしいな」
「いろいろやり過ぎだ。優先順位をつけて、片付けて行け」
「何から片付ける」
「環境整備と金銭管理だな」
「出版企画書は後か」
「後だ」
「公式HPも後か」
「後だ」
「生活の安定だな」
「そうだ。それが基盤だ。健康とな」
「K山プロに会いに行くのか?」
「行け」
「峰子さんと会うのか?」
「会え」
「インヴェガ3mgをどう思う?」
「妥当だろう。6mgは重い」
「気をつけることは何だ?」
「ふらつき、転倒だ」
「呼吸器のF先生は信頼して良いか」
「動くなだ」
「動き過ぎてはいけない、か」
「そういうことだ」
「そういう事だ」