自我の交替
「おい、突然に過去の正常な自我が出てきたよ」
「良い兆しだ。大切にしろ」
「なんだか怖いよ」
「昔の優秀な自我だ、安心しろ」
「そうなんだ、こいつは何でいなくなったんだ」
「あの、単身赴任事件だよ。あの前からお前は浮かれていた」
「そうか。22年前の自我か。頑張っていたな」
「本当の自分と言い換えてもいいぞ」
「よく、生きていたね」
「そうだな」
「それにしても、なぜ急に正常な自我が戻ってきたんだ」
「お前が目を覚ましたからだろう」
「なんで、目が覚めた」
「知るか、そんなこと」
「とにかく、22年前。1997年の自我なんだな」
「ああ、復活だ」
「浮かれた時代の自我は消えたのか」
「うむ、あの自我はいらんだろう。消えてもらった」
「ロバートは消えるということか」
「遺物というより汚物だな」
「地道に生きるよ。夢を見ずに」
「それが良い」
「当分、この自我で安定だな」
「そうなれば良いね」
「この対話は有益だ」
「統合失調だからね」
「いや、有益だ」
「また、呼んでね」
「あいよ」